中古車選びって、ワクワクする反面、やっぱり不安もつきものですよね。「ちゃんと走るかな?」「すぐ壊れたりしないかな?」…そんな心配を抱えながら、やっと見つけたお気に入りの一台。契約を済ませ、納車された時の喜びは格別です。
しかし、もし、万が一…
「納車されて数日(あるいは数週間)で、なんだか車の調子がおかしい…」 「警告灯が点いた!」 「突然エンジンがかからなくなった!」
こんな悪夢のような事態に見舞われたら、あなたならどうしますか?そして、販売店は一体どんな対応をしてくれるのでしょうか?
今回は、中古車業界の「中の人」として、この「買ってすぐの故障」という、買主さんにとっても売主にとっても非常にデリケートな問題について、販売店側の視点も交えながら、ぶっちゃけ話をしていきたいと思います。
なぜ「買ってすぐ」に故障が起こるのか?
まず前提として、私たち販売店は、中古車を仕入れた後、点検・整備を行い、できる限り良好な状態でお客様にお渡しできるよう努めています。法定点検はもちろん、独自の基準で消耗品を交換したり、試運転を繰り返したり…。「現状販売」でない限り、一定のコストと時間をかけて商品化しているのが普通です。
それでも、残念ながら納車後すぐに不具合が発生してしまうケースはゼロではありません。その理由としては、
- 中古車特有の要因:
- 隠れた不具合: 点検時には症状が出ていなかった、あるいは内部の部品劣化など、外から見ただけ、少し試乗しただけでは発見が難しい不具合が存在することがあります。
- 消耗部品の限界: タイヤやバッテリーのように目に見える消耗品だけでなく、内部のゴム部品やセンサー類など、いつ寿命が来るか予測しきれない部品もあります。納車直後にたまたま寿命を迎えてしまうことも。
- 前オーナーの乗り方: 見えない部分のダメージや、特殊な使われ方をしていた場合など、履歴が完全に把握できないことによるリスクもあります。
- 点検・整備の限界:
- 全ての部品を分解してチェックすることは現実的に不可能です。一定の基準に基づいて点検を行いますが、予兆のない突発的な故障(センサー類の突然死など)までは防ぎきれません。
- ごく稀ですが、整備時の見落としやミスという可能性も否定はできません(もちろん、あってはならないことですが…)。
「ちゃんと整備してないんじゃないの?」と疑いたくなる気持ちは痛いほど分かります。しかし、多くのまっとうな販売店は、意図的に不具合を隠して売るようなことはしません。なぜなら、そんなことをしても、結局はクレーム対応で時間もコストもかかり、お店の評判を落とすだけで、何のメリットもないからです。
ぶっちゃけ、納車直後の故障は、販売店にとっても「できれば起きてほしくない」頭の痛い問題なのです。
販売店の対応パターン:良い店 vs 悪い店(?)
さて、実際に故障が発生した場合、販売店の対応は様々です。ここが、お店の「本質」が見える部分かもしれません。
【理想的な(良い)販売店の対応】
- 真摯な謝罪とヒアリング: まずは、お客様にご迷惑とご心配をおかけしたことを謝罪し、状況を詳しく丁寧にヒアリングします。「いつから」「どんな症状が」「どんな状況で」発生したのかを正確に把握しようと努めます。
- 迅速な車両の引き取り・点検: 可能であれば積載車で引き取りに伺うか、代車を手配するなど、お客様の不便を最小限にする努力をします。そして、速やかに原因究明のための点検作業に入ります。
- 原因と対応方針の明確な説明: 点検結果に基づき、故障の原因、必要な修理内容、そして保証の適用範囲について、分かりやすく説明します。
- 保証期間内・保証対象箇所の場合: 無償で修理を行います。保証内容については、契約時にしっかり説明がありますが、再度丁寧に説明します。
- 保証対象外・保証期間外の場合: なぜ保証適用外なのかをきちんと説明した上で、有償修理となる旨を伝えます。ただし、「買ってすぐ」という状況を考慮し、部品代や工賃の一部を負担するなど、お店としてできる限りの「誠意」を見せようと努力するケースが多いです。(これは義務ではありませんが、信頼関係を重視する店なら自然とそう考えるはずです)
- 修理の進捗報告と納車: 修理期間中も、必要に応じて進捗状況を報告し、お客様を不安にさせないよう配慮します。修理完了後、改めて状態を説明し、納車します。
【残念な(悪い?)販売店の対応】
一方で、以下のような対応をする販売店も、残念ながら存在します…。
- 責任逃れ・言い訳に終始: 「中古車だから仕方ない」「保証期間外/対象外だから知らない」「あなたの乗り方が悪いのでは?」など、最初から責任を認めようとしない。
- 対応が遅い・たらい回し: 電話しても担当者がいない、折り返しがない、点検まで時間がかかる、など誠意が見られない対応。
- 説明が不十分・不透明: 故障原因や修理内容、費用について、曖昧な説明しかしない。保証の解釈を一方的に狭く捉えようとする。
- 高額な修理費を請求: 保証対象外であることを盾に、不当に高額な修理費用を請求しようとする。
なぜ、対応に差が出るのか?(中の人のぶっちゃけ)
- 経営方針・利益構造: とにかく利益優先で、売った後のことはあまり考えていないお店。クレーム対応コストを極端に嫌う体質。
- 保証体制の不備: 自社保証の内容が貧弱だったり、保証業務に関するノウハウや人員が不足していたりする。
- 担当者のスキル・意識: 担当者個人の知識不足や、顧客対応に対する意識の低さ。
- そもそも悪徳業者: (これは論外ですが)最初から問題を隠して売るような業者。
重要なのは「保証」と「契約不適合責任」
ここで、法的な側面も少し触れておきます。中古車購入後のトラブルで重要になるのが「保証」と「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」です。
- 保証: 販売店が独自に設定する、あるいは保証会社を利用するもので、「期間」「走行距離」「対象部位」などが定められています。契約時に内容をしっかり確認することが重要です。保証期間内・対象部位の故障であれば、基本的に無償修理が受けられます。
- 契約不適合責任: これは民法で定められた売主の責任です。簡単に言うと、「売買契約の内容に適合しない(=通常期待される品質や性能がない、説明と違うなど)場合に、売主が負う責任」のこと。納車後すぐに、通常の使用で起こるとは考えにくい重大な欠陥(エンジンやトランスミッションの深刻な不具合など)が見つかった場合、たとえ保証対象外であっても、買主は売主に対して修理(追完請求)、代金減額、契約解除、損害賠償などを請求できる可能性があります。ただし、「契約に適合しない」ことの証明や、それが「購入時点ですでに存在した欠陥」であることの立証が必要になる場合もあり、簡単ではありません。
まっとうな販売店は、保証はもちろん、この契約不適合責任についても理解しており、誠実に対応しようとします。 保証対象外だからといって、すぐに「有償です」と突っぱねるのではなく、状況によっては契約不適合責任の観点も踏まえて対応を検討するはずです。
もし「買ってすぐ故障」してしまったら?購入者がすべきこと
万が一、あなたの購入した中古車がすぐに故障してしまった場合、慌てず、以下のステップで対応しましょう。
- 安全確保: 走行中に異常を感じたら、まずは安全な場所に停車してください。
- 販売店へ連絡: 購入した販売店に、できるだけ早く連絡します。「いつ」「どんな症状が」「どんな状況で」発生したかを具体的に、冷静に伝えます。感情的になっても良いことはありません。
- 契約書・保証書の確認: 手元にある契約書や保証書を確認し、保証期間や保証内容を再確認しておきましょう。
- 記録を残す: 販売店とのやり取り(日時、担当者名、内容)はメモに残しておきましょう。修理が必要になった場合は、見積書や整備記録なども保管します。
- 相談窓口の利用: 販売店の対応に納得がいかない場合や、話が進まない場合は、消費生活センターや自動車公正取引協議会などの相談窓口を利用することも検討しましょう。
まとめ:信頼できる店選びと、冷静なコミュニケーションが鍵
中古車は、どんなにしっかり点検・整備しても、予期せぬ故障のリスクをゼロにすることはできません。大切なのは、万が一のトラブルが発生した際に、販売店がどれだけ誠実に対応してくれるか、です。
私たち「中の人」から見ても、納車直後のクレーム対応は、そのお店の姿勢や信頼性が最も表れる場面だと感じています。 目先の利益にとらわれず、お客様との長期的な信頼関係を大切にするお店は、誠意ある対応を心がけるはずです。
これから中古車を購入される方は、価格や車の状態だけでなく、
- お店の評判(口コミ、レビュー)
- 保証内容の充実度と説明の丁寧さ
- 担当者の対応(質問への回答が的確か、親身になってくれるか)
といった点も、しっかりチェックすることをおすすめします。
そして、もしトラブルに見舞われてしまった場合は、まずは冷静に販売店とコミュニケーションをとってみてください。この記事が、皆さんの安心な中古車選びと、万が一の際の対応の一助となれば幸いです。
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